遠山美都男著『天皇誕生 日本書紀が描いた王朝交替』中央新書 を読む。
天皇に関しては知識と興味はなかったのですが、この本を読む気になった経緯は、図書館の新刊書棚にあった『古事記と日本書紀』(多田元 監修、東西社)を何気なく手に取ったことからです。
『古事記と日本書紀』にはイラストが多く入れてあり、古事記と日本書紀がどのような内容の本なのかも知らない私にも理解できるように書かれていた。
続いて『偽りの大化の改新』(中村修也著、講談社現代新書)を読む。
そして図書館で『天皇誕生』が目にとまり読む気になる。
この本に書かれているのは日本書紀の神武天皇から武烈天皇までの物語です。
本は各節の初めに囲みのなかに『日本書紀』の物語のダイジェストがあり、続いて読み解きがされている。
物語のダイジェストは解りやすく書かれています。
内容は神武天皇に始まり応神天皇に終わる物語と、仁徳天皇に始まり武烈天皇に終わる物語の二つのまとまりになっている。
『天皇誕生』は古墳時代の天皇が権力者に上りつめる過程と、その周りに起きる争いの物語である。(継体天皇以後、持統天皇までは書かれていない。)
『日本書紀』の天皇の系図には作られた天皇が多いようです。
その作られた天皇のなかにも争いの物語があり、ましてや実在とされる天皇が即位されるまでに後継者争いがおきることがあり、即位してからも権力者階層内での争いは尽きることはないようだ。(権力内の争いは『日本書紀』の中大兄王子=天智天皇が書かれている「偽りの大化改新」に詳しい。)
この本『天皇誕生』の基になっている『日本書紀』は天皇家や各氏族の歴史上での位置ずけを行うの目的で書かれたのでしょうが、この本を読み、思ったことの一つは次のことです。
どのような集団でも意見の違いがおきます。
権力をもつ階層内の意見の違いは、そのことが階層内でのそれぞれの利害を伴うので争いは激しくなる。
その争いはあくまでも権力を持つ階層内の争いであり、外に対しては階層全体の利益を守ることでは一致する。
そのようなことで権力を持つ階層が自ら解体していくことはなく、外からの改革の力(革命に近いような改革、例えば日本史の平安時代、鎌倉時代のように時代区分され支配層が変わる)が働かないと階層は世代を継いで固定してしまい、争いはおきるのですがその階層内の争いだけで終わってしまうようです。